産業医面談の重要性とは?企業が理解すべき運用のポイント

産業医面談の重要性とは?|企業が理解すべき運用のポイント

社員のメンタル不調や長時間労働が社会課題となる中、企業に求められるのは「健康を守る職場づくり」です。

産業医面談」はその中心的な仕組みです。しかし実際には「形式的に行っているだけ」「社員が不安を感じている」など、制度を十分に活用できていないケースも少なくありません。

この記事では、企業が産業医面談の本来の目的を理解し、効果的に運用して信頼される企業へと成長するためのポイントを解説します。

目次

産業医面談の目的は「社員の健康を守ること」

産業医面談の目的は「社員の健康を守ること」

産業医面談とは、産業医が社員と直接対話し、心身の健康状態や働き方を確認することです。

長時間労働・強いストレス・健康診断の異常値など、健康に影響が出る可能性がある場合に実施され、社員が安心して働き続けられるように必要な配慮を検討します。

企業は、産業医がまとめた「就業上の意見」を参考に、働き方の調整や職場環境の改善を行います。

産業医面談は、社員を評価したり、管理するためのものではありません。社員の健康を守り、働ける状態を維持することが本来の目的です。

産業医による面談は、労働安全衛生法にもとづく企業の「安全配慮義務」に位置づけられ、社員の健康維持を図るための重要な産業保健活動のひとつとされています。

社員の健康を守ることは、企業にとっても以下のようなメリットにつながります。

  • 生産性の向上
  • 離職の防止
  • 労務リスク(労災・訴訟)の回避

面談を上手に活用する企業ほど、社員の生産性が向上し、定着率も上がります。

産業医面談の種類と企業の義務

産業医面談の種類と企業の義務

産業医面談にはいくつかの種類があり、それぞれ実施されるタイミングや目的が異なります。

まず企業として押さえておくべきポイントは、労働者数が常時50人以上の事業所では産業医を選任することが法律で義務づけられているという点です。(労働安全衛生法 第13条

産業医の選任は、社員の健康を守り、労務リスクを防ぐための基本的な体制づくりです。そのうえで、企業は次のような場面で産業医面談を適切に実施する必要があります。

面談の種類法的区分対象内容概要
長時間労働者への面談義務(労働者の申出があった場合)月80時間超の残業者過労リスクの確認と就業配慮の提案
高ストレス者への面談義務(高ストレス者本人の申出があった場合)ストレスチェックの結果、高ストレス者と判断された労働者メンタル不調の予防・改善
健康診断後の面談義務(医師の意見聴取が必須)異常所見がある社員就業上の措置(配置・時間短縮など)について医師の意見を聴く
必要に応じて面談も実施
復職面談任意休職から復帰予定の社員復職可否・業務内容調整の確認
自主申告面談任意希望者自主的な健康相談・早期ケア

長時間労働者への医師による面接指導」と「健康診断後の事後措置(医師の意見聴取)」は、企業規模にかかわらずすべての事業場に義務づけられている仕組みです。

50人未満の企業でも、健康診断で異常所見があった場合や、長時間労働者から申出があった場合には、医師による確認・意見聴取を行わなければなりません。

以下にそれぞれの面談の種類について、詳しく解説します。

長時間労働者への面談

時間外・休日労働が月80時間を超えた社員に対して、企業は医師による面接指導を「申し出があれば必ず実施」する義務があります。

該当する労働者へは必ず案内をし、面談を勧めることが企業の責任です。

申し出がなかったからといって放置してしまうと、健康リスクを見過ごしたと判断され、結果的に安全配慮義務違反とみなされる可能性があります。

企業は、以下のような申し出を促す体制づくりをしておきましょう。

  • 長時間労働者に対して個別に通知する
  • 面接指導の目的やメリットを説明する
  • 面談の申し出方法を明確にしておく

面談を実施するかどうかは本人の意思によるものですが、企業側が正しい情報提供と機会を確保しているかどうかが重要なポイントとなります。

高ストレス者への面談

ストレスチェックで「高ストレス者」と判定された社員には、本人が希望した場合に医師による面接指導を受けられる制度があります。

ストレスチェックとは、社員がどれくらいストレスを感じているのかを「質問票」で測定する制度のことです。2015年から、従業員50人以上の事業場では実施が義務化されています(労働安全衛生法 第66条)。

従業員50人未満の事業場についても、労働安全衛生法改正により、2028年までに義務化されることになりました。

ここで重要なのは、企業は「希望があるかどうかを待つだけ」では不十分だという点です。

高ストレス状態はメンタル不調の前兆であることも多く、社員自身が「申し出ていいのか分からない」「忙しいから後回しでいい」と判断してしまうケースも少なくありません。

そのため企業には、以下のような「希望を出しやすい環境づくり」が求められます。

  • 高ストレス者に対して個別に通知する
  • 面接指導の目的(評価でなく支援)を説明する
  • 面談の申し出方法を明確にしておく

メンタル不調は、早期対応ほど改善しやすく、企業にとっても長期休職や離職を防ぐ大きなメリットにつながります。

企業が主体的に支援の機会をつくることが、健全な職場づくりには不可欠です。

健康診断後の面談

健康診断で気になる結果が出た社員については、産業医が必要と判断した場合、企業は必要に応じて面談の機会を提供します。

これは労働安全衛生法(第66条)で定められており、企業側が実施を先延ばしにしたり、対応を省略することはできません。

復職面談

休職していた社員が職場に戻る際は、「どの程度働けるか」「勤務制限は必要か」を確認するために産業医面談を行います。

法令で明確な義務とは位置づけられていないものの、復職後の再発防止や安全確保の観点から、実務上は必須の対応とされています。

自主申告面談

社員自身が体調やメンタル面に不安を感じたとき、自主的に産業医へ相談できる仕組みを設けている企業も増えています。

相談窓口として産業医を活用することで、不調を早期にキャッチし、深刻化を防ぐ効果があります。

産業医面談の流れと企業の役割

産業医面談の流れと企業の役割

産業医面談は、企業・産業医・社員の三者が連携しながら健康リスクを把握し、働き方の改善につなげるプロセスです。

ここでは、産業医面談の一般的な流れと、企業が果たすべき役割を整理します。

STEP
面談が必要な社員を見つける

面談が必要となるきっかけは以下のようにさまざまです。

  • 長時間労働(時間外労働が80時間超)
  • ストレスチェックで高ストレス者となった場合
  • 健康診断で異常所見が見つかった場合
  • 休職・復職のタイミング
  • 本人からの相談・申告

企業は、勤怠データや健診結果を確実に把握し、対象となる社員を見落とさない仕組みを整える必要があります。

STEP
面談の目的と守秘義務を説明し、同意を得る

面談前に企業がすべきことは、社員に以下の項目をわかりやすく説明し、安心して参加してもらうことです。

  • 面談の目的(支援であり評価ではない)
  • 守秘義務があるため、プライバシーは保護されること
  • 面談後の流れ

この段階で信頼関係が築けていれば、社員が本音を話すことができ、面談の効果が発揮されます。

STEP
産業医が面談を行う

面談では、産業医が医学的な視点から以下のことを確認します。

  • 心身の状態
  • 生活習慣
  • 業務負荷
  • 職場環境のストレス要因
STEP
面談結果をもとに産業医が改善提案(意見書)をまとめる

面談後、産業医は必要な就業上の措置に関する「意見書」を企業に提出します。

例えば以下のような内容が考えられます。

  • 勤務時間の調整
  • 業務内容の見直し
  • 配置転換の検討
  • 通院や治療への配慮

企業はこの意見書を「形式的に受け取るだけ」で終わらせるのではなく、職場環境の改善に活かす責任があります。

STEP
企業が意見書をもとに勤務調整やサポートを行う

企業が実務として対応すべきことは次の通りです。

  • 勤務時間・残業の調整
  • 仕事内容や担当業務の見直し
  • 無理のない復職スケジュールの設計
  • 通院・治療のための配慮
  • 管理職との情報共有(必要最低限の範囲で)
STEP
面談記録を保管し、今後の改善に活かす(保管期間は5年)

長時間労働者への産業医による面談や、ストレスチェック後の面接指導については、労働安全衛生法により、5年間保存することが義務付けられています。

復職面談や自主申告面談など任意の面談記録についても、同様に5年間を目安に適切に保管しておくことで、将来の職場改善や再発防止への備えとして重要なデータになるでしょう。

産業医面談の流れや企業の役割を理解したうえで、実際に導入したり、体制を整えたりするには、信頼できる窓口があると心強いです。

求人ジャーナルの「産業医サポート」ページでは、産業医の選任支援から面談の運用、体制構築まで、企業をサポートするサービスを提供しています。

はじめて産業医制度を導入する企業、現在の仕組みに不安や迷いがある企業担当者の方は、ぜひこちらから相談してみてください。

産業医面談を取り入れるメリット

産業医面談を取り入れるメリット

産業医面談は、正しく運用することで企業の生産性や組織づくりに大きなメリットをもたらします。

ここでは企業が得られる4つの効果を分かりやすくまとめます。

1. トラブルを防ぐ

産業医面談を導入する最大のメリットは、健康トラブルを未然に防げることです。

長時間労働やメンタル不調は、放置すると企業にとって大きな負担になる可能性があります。

例えば、以下のようなリスクが考えられます。

  • 労災の発生
  • 長期離職、休職
  • 裁判・安全配慮義務違反のリスク

産業医面談で早期にリスクを把握し、勤務調整や医療受診につなげることで、これらのトラブルを事前に回避できるでしょう。

2. 働きやすい職場づくり

産業医面談では、社員が日頃の働き方で負担に感じていることや、職場でのストレス要因が見えやすくなります。

例えば、業務量の偏り、コミュニケーション上の悩み、生活習慣と仕事の両立など、普段は表に出にくい問題が明らかになるケースも多いです。

企業が産業医の意見をもとに働き方や職場環境を調整することで、社員にとって安心して働ける職場づくりが進みます。

これは単なる制度の運用ではなく、企業文化として「社員の健康を大切にする姿勢」を育てるきっかけにもなります。

3. 離職率の低下と定着率向上

健康トラブルが長引き、仕事を続けることが難しくなるケースは珍しくありません。

しかし産業医面談によって、不調の初期段階で気づき、無理のない働き方に見直すことができれば、休職や離職を防げる可能性が大きく高まります。

社員自身も「会社が自分のことを気にかけてくれている」と感じ、安心して働き続けやすくなるでしょう。

こうした細やかなケアは、結果として定着率の向上につながり、採用や育成のコスト削減にも好影響を与えます。

4. 企業ブランドの向上

産業医面談を適切に運用している企業は、外部からの信頼も高まりやすくなります。

健康経営が注目される中、社員の心身の健康を大切にする企業は、求職者から「安心して働ける会社」として評価されるでしょう。

取引先や顧客に対しても「労務管理をきちんとしている会社」という印象を与え、企業イメージの向上に寄与します。

結果として、採用力の強化、企業価値の向上といった長期的なメリットをもたらします。

社員の不安を理解し信頼される面談にするには

社員の不安を理解し信頼される面談にするには

産業医面談は本来、社員を守るための制度ですが、実際には「なんとなく不安」「面談と聞いただけで緊張する」という声が多くあります。

企業がこうした不安を理解し、丁寧に説明を行うことで、面談の効果は大きく変わるでしょう。

ここでは代表的な不安と、企業ができる対応ポイントをまとめます。

「クビになるのでは」という不安と企業の伝え方

社員が最も抱きやすい不安が「この面談で評価が下がるのでは」「働けないと判断されたら解雇されるのでは」という誤解です。

産業医面談は処分を決める場ではなく、社員を健康トラブルから守るための支援の場であることを、まず企業がはっきり伝える必要があります。

「面談が評価と結びつくのでは」と社員が感じると、本音を話せず、面談そのものの効果が薄れてしまいます。

そのため企業は「面談内容は就業配慮のために使うもので、評価の材料にはならない」ことを明確に伝え、安心して話してもらえる環境をつくることが大切です。

「何を話せばいいのか分からない」という不安と事前説明の工夫

「面談でどこまで話せばいいのか」「どんな質問をされるのか分からない」という不安も多くあります。

企業としては、この不安を取り除くために、面談前の事前説明を丁寧に行うことが欠かせません。

面談の大まかな流れや、産業医が確認したいポイントを簡単に案内しておくことで、社員は心の準備をしやすくなります。

たとえば、最近の体調の変化や業務で負担に感じていること、生活リズムとのバランスなど、産業医との会話のイメージを持てるような情報を事前に知らせておくと、面談のハードルが一気に下がります。

「正直に感じていることを話して問題ない」というメッセージを伝えておくことも効果的です。

「会社に報告されるのでは」という不安と情報共有のルール

産業医面談に対して根強く残る不安のひとつが「面談の内容がすべて会社に知られてしまうのではないか」という懸念です。

しかし実際には、産業医には厳格な守秘義務があり、社員のプライバシーに関わる内容が企業側に直接伝わることはありません。

企業に共有されるのは、産業医が医学的な観点から整理した「就業上の配慮に関する意見書」のみであり、病名や個人的な事情といったセンシティブな情報が伝達されるわけではありません。

企業が知るのは「必要な配慮」のみで、その背景にある詳しい事情までは産業医が守秘義務によって保護しています。

企業としては、どこまでの情報が共有されるのか、何が共有されないのか、そして意見書をどのように取り扱うのかといった点を、事前に社員へ丁寧に説明しておくことが重要です。

面談の情報管理が適切に行われることが伝われば、社員は安心して本音を話しやすくなり、面談そのものの効果も高まります。

社員の体験談に見る“信頼される面談”の共通点

社員の体験談を聞くと「信頼できる面談だった」と評価されるケースにはいくつかの共通点があります。

たとえば、長時間労働が続き不調を感じていた社員は、産業医が業務内容の負担や生活リズムの変化まで丁寧に耳を傾けてくれたことが嬉しかったそうです。そのうえで「業務量を調整し、負担の大きい工程を見直しましょう」といった具体的な提案があり、大きな安心感につながったといいます。

メンタル面の不調で面談を受けた社員は、産業医が本人のペースに合わせて話を引き出してくれた点を“良かった点”として挙げています。面談後に部署内の業務配分が見直されたことで「相談した内容がきちんと反映された」と感じたそうです。

これらの事例に共通しているのは、産業医が誠実に話を聞く姿勢と、企業が面談内容を実際の働き方に反映している点です。

面談そのものだけでなく、その後の対応まで丁寧に取り組むことで、面談は社員にとって「安心して相談できる制度」として機能します。

産業医面談を正しく運用するための実務対応チェック

産業医面談を正しく運用するための実務対応チェック

産業医面談を正しく運用するためには具体的にどのような実務対応が必要なのでしょうか。

ここでは、実務で押さえておくべき4つのポイントを整理します。

守秘義務と情報管理ルールを明文化する

社員が安心して面談を受けられるようにするためには、情報管理のルールを社内で明確にしておくことが欠かせません。

意見書に含まれる情報の扱い方や、共有する範囲、閲覧可能な担当者など、運用ルールを文章化し、関係者間で共有しましょう。

情報漏えいのリスクを防ぎつつ、社員に対しても「安心して面談を受けられる環境である」ことを伝えやすくなります。

面談後のフォロー体制を整える

面談そのものよりも、その後の対応が社員の健康を支えるうえでとても重要になります。

産業医からの意見書を受け取ったあとは、勤務時間の調整、業務の見直し、通院への配慮など、必要なサポート体制を整えましょう。

また、面談後の状態を定期的に確認し、必要に応じて追加面談や部署調整を行うなど、継続的なフォローが行える仕組みを作ることも重要です。

面談対象の選定・記録管理を徹底する

長時間労働者や高ストレス者、健診で異常が見つかった社員など、面談の対象となりうる社員を見落とさないためには、勤怠データや健診結果の管理が不可欠です。

実施した面談の記録や意見書は、法令に基づき5年間の保管が求められます。

適切な記録管理は、職場改善に活かせるだけでなく、労務リスクを避けるための重要な基盤になります。

社員・管理職への制度理解を浸透させる

制度があっても、現場がその意味や目的を理解していなければ十分に機能しません。

特に管理職は、面談の対象となる社員に最も近い立場にいるため、制度の目的や運用の流れ、意見書の扱い方などを理解している必要があります。

社員に対しても、面談の意義やメリットを定期的に周知することで「面談は評価ではなく支援の一環」という認識が社内に広まり、制度がより受け入れられやすくなります。

産業医の探し方・導入のすすめ

産業医の探し方・導入のすすめ

産業医制度は、社員の健康管理を強化し、企業のリスクを減らすための重要な仕組みです。

ここでは、産業医を導入するまでの流れを分かりやすく解説します。

1. 「自社に産業医が必要か」を確認する

産業医の選任は、労働者数50人以上の事業所に義務づけられています。しかし、近年では50人未満の企業でも「リスク管理」や「社員の健康支援」目的で産業医を導入するケースもあります。

背景には、近年メンタル不調による離職が増えていることや、長時間労働に起因する労務リスクが深刻化していること、健康管理そのものが企業の経営課題として注目されるようになったことなど、働く環境をめぐる状況の変化があります。

そのため「義務はないから関係ない」と判断せず、一度自社の状況を整理し、産業医が必要かどうかを検討することが重要です。

2. 信頼できる産業医を選ぶポイント

産業医を選ぶうえで重要なのは「コミュニケーション力」です。企業の業務内容や働き方を理解しようとする姿勢があり、社員と安心して話せる雰囲気をつくれる医師であれば、面談の質が大きく変わります。

企業側とのやり取りもスムーズに行えるため、意見書の内容も実態に沿ったものになりやすく、運用のしやすさにつながります。

さらに「企業文化との相性」も見逃せません。例えば、スピード感を重視する企業であれば迅速にフィードバックを行える医師が合いますし、丁寧な対話を重視する企業なら傾聴を得意とする医師が向いています。

事前の打ち合わせでは、自社の課題や改善したい点を共有し、産業医の考え方や対応スタイルが自社に合うかどうかも確かめると安心です。

3. 導入をスムーズに進めるために

産業医を導入するときは、事前に「どのような契約で、どれくらいの頻度で関わってもらうのか」を明確にしておくことがスムーズな運用につながります。

たとえば、月1回の訪問なのか、オンライン面談を併用するのか、緊急対応の範囲はどこまで含まれるのかといった点は、企業と産業医の双方が共通認識を持っていると、安心して任せることができます。

面談の流れや意見書の提出方法、企業内での連絡ルールなど、実務に関わる部分もしっかり話し合っておくとお互いに安心できます。

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