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「産業医面談を実施した結果、休職を検討すべきと言われたが、実際に休職命令を出せるのは誰なのか?」
従業員の体調不良が続く中で、このような疑問を抱く企業担当者は少なくありません。
休職命令は会社の判断で発令できる一方、法的な根拠や手続きを誤るとトラブルに発展する可能性もあります。
本記事では、産業医面談と休職命令の関係を整理したうえで、命令の出し方、書類の書き方、復職までの流れ、そして実務上の注意点まで実務担当者目線でわかりやすく解説します。

産業医の権能は労働者の健康管理に関する専門的助言・勧告を行うことにとどまり、休職命令を出すことはできません。
産業医面談の結果、「休職が望ましい」と意見が示される場合があります。しかし、この判断はあくまで医学的観点からの意見・助言であり、強制力を伴うものではありません。
では、産業医にはどのような権能が認められているのでしょうか。主なものは以下のとおりです。
産業医の主な権能
・事業者、総括安全衛生管理者への勧告(安衛法第13条第5項、安衛則第14条第3項)
・衛生委員会における労働者の健康障害防止対策等の調査審議(安衛法第18条)
・衛生管理者への指導・助言(安衛則第14条第3項)
・労働者の健康障害防止のための職場巡視および現場における緊急措置(安衛則第15条)
・長時間労働者等に関する情報の把握(安衛則第51条の2、第52条の2等)
このように、産業医は、労働者に対して直接命令を出す権限は与えられていません。
実務では「産業医が休職と言ったから休ませる」という理解が広まりがちですが、正しくは「産業医の意見を踏まえて会社が判断する」という構造です。
以下では、休職命令の発令主体や休職命令書の法的効力について解説します。
休職命令は、産業医ではなく事業者(会社)が発令するものです。
休職制度は法律で一律に義務付けられているものではなく、各企業が就業規則によって任意に設ける制度です。
そのため、社内に休職制度が存在しなかったとしても、直ちに違法となるわけではありません。
しかし、実際に従業員から休職の申し出があった際や、会社側から休職を命じる必要が生じた際には、就業規則に根拠となる規定がなければ、制度として適切に運用することができません。
トラブルを避けるためにも、あらかじめルールを明文化しておくことが重要です。
休職命令が有効と認められるためには、就業規則に根拠となる規定が定められていることが必要です。
そのため、休職命令を出す際には、以下に注意しましょう。
・就業規則に休職制度の明確な根拠があること
・制度内容が合理的であること
・休職事由に相当性があること
これらの要件を満たす場合、休職命令は労働者に対して拘束力を持つ命令となります。
もっとも、会社から発令される休職命令は、労働者にとって次のような不利益を伴う可能性があります。
・就労機会が停止する
・賃金不支給の可能性
・休職期間満了による退職の可能性
実際に、休職命令後、休職期間満了までに復職できなかった従業員を退職扱いとした事案で、休職命令の手続きに不備があったとして、会社側に高額の支払いが命じられた裁判例もあります(京都地裁 平成28年2月12日)。
就業規則の要件を満たしていない安易な発令は無効とされるリスクがあるため、制度の根拠と就業規則の周知が極めて重要といえるでしょう。
休職命令書は要件を満たせば法的効力を持つのに対し、産業医の意見書には法的な強制力はありません。
産業医意見書の位置づけは、あくまで医学的な助言であり、会社の判断を補強する参考資料の一つです。
・産業医意見書:助言(法的拘束力なし)
・休職命令書:会社の命令(合理性があれば拘束力あり)
会社としては以下の情報を総合的に踏まえて判断する必要があります。
・産業医の意見
・主治医の診断書
・勤務状況や業務遂行能力
・配置転換など配慮措置の検討経緯
重要なのは、休職命令を出せるかどうかではなく、合理性・必要性を満たした状態で適法に発令できるかどうかです。

休職命令は、従業員の体調不良が判明した時点ですぐに出すものではありません。
産業医面談や主治医の診断書、就業規則の内容、勤務状況などを踏まえ、段階を踏んだうえで就業継続が困難と判断できるタイミングで発令する必要があります。
また、休職命令は口頭だけで済ませるのではなく、必ず書面で通知することが実務上重要です。
ここでは、休職命令を出す際の基本的な手順と書類の作成方法について解説します。
前述のとおり、休職命令を発令するには、就業規則に休職制度が定められていることが前提となります。
多くの企業では就業規則に次のような事項を定めています。
・休職事由
・休職期間
・休職中の賃金の扱い
・復職要件
・期間満了時の取扱い
就業規則にこれらの内容が明記されていない場合、休職命令の有効性が争われるリスクが高まるため、明確に定めておきましょう。
休職命令を出すにあたり、明確な基準が法律で定められているわけではありません。
実務上は次の観点が判断の“ものさし”になります。
・継続的な欠勤や遅刻が続いている
・業務遂行能力が以前に比べ著しく低下している
・産業医が療養専念を推奨している
・配慮措置や業務軽減を試みたものの困難
・感情の起伏が激しくなり、情緒不安定になる
これらは、過重労働やパワハラ、セクハラといった何らかの理由によって、自ら不調を感じたり、周りが気づいたりすることが多いでしょう。
実務担当者に求められるのは、体調が悪そうという主観ではなく、上記のような客観的事情を積み重ねることです。
業務軽減や配置転換などを検討したうえで、それでも就業継続が困難であるときに休職命令を発令します。
休職命令は、後のトラブルを防ぐためにも必ず「休職命令書」を作成し、書面で通知しましょう。
口頭だけで伝えた場合、休職開始日や休職期間の起算日を巡ってトラブルに発展するおそれがあるため、会社として正式な「休職命令書」を作成し、従業員に通知することが重要です。
休職命令書には、少なくとも次の内容を明記し、必要に応じて項目を増やしてもいいでしょう。
・発令日
・対象従業員の氏名
・休職事由(就業規則〇条〇項に基づく等)
・休職開始日
・休職期間
・休職中の賃金の取扱い
・復職の条件(診断書提出など)
・期間満了時の取扱い
・添付書類(産業医意見書など)
産業医意見書や診断書の提出を前提としている場合でも、命令主体は会社であることが明確にわかる文面にすることが望ましいでしょう。

休職命令は、ある日突然一方的に発令するものではありません。
必要な手順を踏まずに進めると、後に労働トラブルに発展するリスクがあります。
不調のサインを見逃さず、医学的な評価に基づいた判断、そして復職に向けたフォローまでを、以下の6ステップに分けて説明します。
休職命令を出す前に、まずは労働者の体調不良を把握する必要があります。
体調不良に気づくきっかけはさまざまで、本人の申告だけでなく、上司の気づきや勤務状況の変化などから発覚するケースも少なくありません。
・本人からの申告
・上司からの相談(遅刻・欠勤の増加、ミスの増加など)
・長時間労働者面談
・ストレスチェック結果
・診断書の提出
勤務状況や言動に明らかな変化がある場合は、事実関係を記録しておくことが、休職判断の根拠につながるでしょう。
労働者の体調不良が疑われる場合は、産業医面談を実施し、医学的な観点から意見を聴取します。
会社が円滑に面談を指示するためには、あらかじめ就業規則に「会社は必要に応じて産業医面談の実施を命じることができる」旨の規定を設けておくことが望ましいです。
この規定がないと、いざという時に受診を強制できず、適切な安全配慮義務を果たせなくなる恐れがあります。
産業医の役割は、本人の健康状態を評価し、現在の業務を継続できるか、あるいは就業制限が必要かといった専門的な意見を出すことにあります。
そのため、面談を実施するにあたっては、会社側が業務内容や最近の勤務時間、具体的な勤務実態などの情報を整理し、産業医へ正確に共有することが極めて重要です。
産業医の意見を踏まえ、会社として対応方針を検討します。
いきなり休職とするのではなく、以下の措置も検討し、労働者が勤務可能かどうかを判断し、検討結果をまとめておきましょう。
・業務軽減
・配置転換
・時短勤務
・在宅勤務
・就業制限
これらの配置転換措置でも就業継続が困難と判断される場合に、休職命令の検討へ進みます。
就業規則に基づき、合理性・相当性があると判断した場合に、会社が休職命令を発令します。
また、休職命令を出すにあたって極めて重要なのが、「書面による通知」です。
休職の発令日は、その後の休職期間や満了日を算出するための重要な起算点となります。「言った・言わない」の食い違いを防ぐためにも、口頭のみで済ませるのではなく、必ず書面を交付してください。
その際、可能であれば従業員から受領確認(署名や受領印など)を取っておくことが、実務上望ましい対応といえます。
具体的な発令のタイミングや書類の記載内容については、前述の「休職命令のタイミングと出し方、書類の書き方」を確認しましょう。
休職期間中も、会社の対応は続きます。
具体的には、次のような多岐にわたるフォローが必要です。
・傷病手当金などの社会保障制度の案内や手続き
・定期的な状況確認
・診断書の提出依頼
・復職見込みの確認
・休職期間満了日の管理
休職期間中に会社が労働者の状況をまったく把握しないまま放置してしまうと、いざ復職の可否を判断する際や、退職の手続きを進める場面で、認識の相違から大きなトラブルに発展しかねません。
こうした事態を防ぐためにも、休職期間中は適切な頻度で連絡を取り合い、やり取りの内容や健康状態を記録に残しておくことが極めて重要です。
復職の可否は、診断書に復職可能と記載されているかどうかだけで判断するものではありません。
次のような流れで復職可否を判断します。
会社としては、
・元の業務を遂行できるか
・配慮措置が必要か
・再発リスクは高くないか
といった点を総合的に検討して復職の可否を判断します。
なお、休職期間満了の時点で復職が困難と判断される場合には、就業規則の定めに基づき自然退職や解雇の扱いとなるケースもあります。
この対応を誤ると、解雇の有効性を巡る法的トラブルにつながる恐れがあるため「どのような状態であれば復職が可能か」といった基準を明確にしておきましょう。

休職命令は、従業員の健康を守るための制度である一方で、就労機会の停止や賃金不支給など労働者に不利益を伴う可能性がある措置でもあります。
そのため、会社が休職を判断する際には、制度の根拠や判断の合理性が確保されているかを慎重に確認することが重要です。
ここでは、休職を判断する際に特に注意すべきポイントを整理します。
休職命令を出すにあたり、「従業員から休職届の提出が必要なのか」は実務上よく問題になります。
会社が命じる休職制度である場合、必ずしも労働者からの休職届がなければ休職命令を出せないわけではありません。
しかし、後々の「休職したつもりがない」「本当は復職したかった」といったトラブルを防ぐためにも、会社が休職命令を明確に発令したうえで、書面で通知し、あわせて休職届を提出してもらう方法が実務上よく用いられています。
本来、休職届は労働者側が提出する書類ですが、会社であらかじめ書式を用意しておくことで、手続きをスムーズに進めることができるでしょう。
休職届には、一般的に次のような項目を記載します。
・休職理由
・休職期間
・休職中の連絡先(本人の連絡先)
・添付書類(診断書など)
これらの情報を整理しておくことで、休職期間中の連絡や復職判断をスムーズに行うことができます。
休職制度を運用するためには、就業規則に定められた休職制度自体が合理的な内容であることも重要です。
例えば、就業規則の休職期間が極端に短い場合や復職要件が不明確になっている場合、休職命令の有効性が争われる可能性があります。
そのため、就業規則には以下の項目を明確に定めておくことが望ましいといえます。
・休職事由
・休職期間
・復職要件
・期間満了時の取扱い
休職命令を出すには、就業規則に定められた休職事由に該当していることも必要です。
労働者が勤務可能であるにもかかわらず、合理的な理由なく一方的に休職させることはできません。
休職命令が有効とされるためには、次のような事情が認められることが重要です。
・就業継続が困難であること
・配置転換や業務軽減などの配慮措置では対応できないこと
・医学的に療養が必要と認められること
「トラブル回避のため」「職場の雰囲気が悪いから」といった理由だけで安易に休職させると、不当な措置として後にトラブルへ発展する可能性があります。
そのため、医学的意見や勤務状況などの客観的な根拠をもとに判断することが重要です。
休職期間中の給与の扱いは、法律で一律に定められているわけではありません。
原則として、就業規則の定めによって決まります。
多くの企業では「ノーワーク・ノーペイの原則」により、労働者が労務を提供していない場合には賃金支払い義務が発生しないため、労働者側の理由による私傷病休職については無給とするケースが一般的です。
また、給与とは別に、役職手当や家族手当、住宅手当といった各種手当の扱いについても、支給の有無を就業規則で定めることができます。
ただし、就業規則に「休職中は無給」と明記されていても、労働者に事前に制度内容を説明し、どのような不利益が生じるのかを明確に伝えることが望ましいでしょう。
なお、賃金が支給されない場合でも、健康保険に加入している労働者であれば傷病手当金の支給対象となる可能性があります。
支給要件や手続きについては、会社が加入している健康保険組合や協会けんぽに確認するとよいでしょう。

休職は大きく分けると、次の3つの類型があります。
その中でも、「産業医面談 → 休職命令」という流れで問題となるのは、主に私傷病休職です。
そのほかに、企業実務では次のような休職制度が設けられている場合があります。
| 休職理由 | 概要 |
| 私傷病休職 | 業務外の病気やけがの療養のための休職 |
| 事故休職 | 私生活上の事故などにより長期間就業できない場合 |
| 起訴休職 | 刑事事件で起訴された従業員を一時的に職務から離す場合 |
| 懲戒休職 | 不正行為などの懲戒事由により就業停止とする場合 |
| 出向休職 | 他社への出向に伴い自社での身分を休職扱いとする場合 |
| 専従休職 | 労働組合役員として組合活動に専念する場合 |
| 自己都合休職 | 留学・家事都合・公職就任など本人事情による休職 |
| ボランティア休職 | 社会貢献活動や災害支援などに参加するための休職 |
これらの休職制度は、法律で詳細が定められている制度ではありません。
そのため、各企業の就業規則の定めが基本的なルールになります。
私傷病休職において混同しやすいのが、業務上の傷病(労災)との違いです。
業務が原因の傷病の場合は「業務上災害」となり、労災保険の対象になるため、制度の枠組みが異なります。
・私傷病 → 就業規則ベース
・業務上災害 → 労災保険制度ベース
つまり、業務上の傷病については企業独自の制度ではなく、労災保険制度に基づいて補償が行われる点が大きな違いです。

休職をめぐる問題について、産業医と主治医の意見が食い違うことは、決して珍しいことではありません。
主治医は治療の専門家であり、産業医は「就業可能かどうか」を職場環境も踏まえて判断する立場です。
そのため、
・主治医:療養は継続しつつ就業可能
・産業医:現状の職場では就業困難
といったズレが生じることがあります。
この場合は、どちらか一方を機械的に優先するのではなく、
・職場の業務内容を主治医に正確に伝える
・必要に応じて医師同士で情報交換してもらう
・会社としての判断根拠を整理する
といった対応が重要です。
最終的な就業判断は会社が行いますが、医学的見解のすり合わせを丁寧に行うことで、紛争リスクを大きく下げることができます。
就業規則に休職制度の定めがない場合、会社が一方的に休職命令を出すことは難しくなります。
休職は法律上当然に認められる制度ではなく、就業規則に基づく制度だからです。規定がない場合は、
・就業規則を改定して休職制度を整備する
・厚生労働省の「モデル就業規則」を参考に条文を設計する
・労使協議・意見聴取を経て正式に変更する
といった対応が必要になります。
制度が未整備のまま運用すると、休職命令や期間満了退職の有効性が争われる可能性が高まります。まずは規程整備が優先です。
明確な数値基準が法律で定められているわけではありませんが、過重労働やパワハラ、セクハラといった何らかの理由があり、不調を感じる・気づくことが多いでしょう。
実務上は次の観点が判断の“ものさし”になります。
・継続的な欠勤や遅刻が続いている
・業務遂行能力が著しく低下している
・産業医が療養専念を推奨している
・配慮措置や業務軽減を試みたものの困難
・感情の起伏が激しくなり、情緒不安定になる
重要なのは、「体調が悪そう」という主観ではなく、客観的事情を積み重ねることです。
また、業務軽減や配置転換などを検討したうえで、それでも就業継続が困難であることを整理できているかが重要になります。
労働者に心身の不調があると業務上にも変化が現れるため、特に管理監督者は注意を払わなければなりません。
前述のとおり、休職期間や給与の扱いは、法律で一律に定められているものではありません。
原則として、企業ごとに制定された就業規則の定めによります。
一般的には、私傷病休職の場合は無給としている企業が多いですが、
・休職期間の上限
・更新の可否
・期間満了時の取扱い(期間延長や自然退職など)
を明確に定めておくことが重要です。
休職期間は無期限ではなく、一定の期限を区切って設定することをおすすめします。
また、診断書や産業医意見書には、療養見込み期間を明記してもらうと実務上判断しやすくなるでしょう。
賃金不支給となる場合は、傷病手当金などの社会保険制度についても案内するとトラブル防止につながります。
メンタルヘルス不調や長期療養が必要なケースでは、医学的な判断と労務管理の両方が必要になります。
特に頭を悩ませるのが「復職判断」の場面です。
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選任して終わりではなく、企業の健康管理を継続して支える姿勢が、多くの企業から支持されている理由です。
・e-Gov 法令検索『労働安全衛生法』
・e-Gov 法令検索『労働安全衛生規則』
・厚生労働省『心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き』
・株式会社三修社『事業者必携 困ったときに使える!休業・休職をめぐる法律と書式 活用マニュアル』監修者:社会保険労務士 林 智之 P44,54,58,64
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産業医についての、「わからない」「みつからない」といったお悩みをお聞かせください。
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ご契約締結までは、一切ご料金はかかりません。 お気軽にお問合せください。
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