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常時50人以上の労働者を使用する事業場では、産業医の選任が義務付けられており、産業医を選任した後は、遅滞なく、所轄の労働基準監督署に「産業医選任報告」を提出しなければなりません。
しかし、「いつまでに提出するのか?」「どの様式を使うのか?」「電子申請はできるのか?」といった疑問を持つ担当者の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、産業医選任報告の提出義務・届出方法・記入例まで分かりやすく解説します。

産業医選任報告とは、事業場が産業医を選任したとき、または変更(辞任・解任等による交代)した場合に、所轄の労働基準監督署へその旨を届け出る手続きのことです。
選任後は、法令に基づき届出が義務付けられており、所定の様式を用いて提出する必要があります。
使用する様式は「総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告(様式第3号)」 です。この様式は、産業医選任報告だけでなく他の管理者の選任報告にも共通して使用されます。

産業医選任報告は、「初めて産業医を選任したときだけ提出すればよい」わけではありません。
すでに産業医を選任している事業場であっても、一定の変更が生じた場合には再度届出が必要となります。
では、どのようなケースで提出義務が発生するのでしょうか。産業医選任報告が必要となる主なケースについても解説します。
事業場で初めて産業医を選任した場合には、産業医選任報告の提出が必要です。
ここでいう「事業場」とは、企業全体を指すのではなく、本社・支社・営業所・工場等の単位をいいます。
新たに産業医の選任義務が発生するタイミングは、常時使用する労働者数が50人以上となったときです。
(参考:労働安全衛生法第13条、労働安全衛生法施行令5条)
たとえば、事業拡大や人員増加により50人以上となったタイミングで産業医を選任した場合には、所轄の労働基準監督署へ遅滞なく届出しなければなりません。また、新設の事業場で当初から労働者数が50人以上である場合も同様に届出します。
なお、産業医を選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任する必要があり、期限管理にも注意が必要です。
(参考:労働安全衛生規則第2条第2項、同規則第13条第2項)
初めて産業医を選任した場合だけでなく、既に選任している産業医に変更が生じた場合にも再度提出が必要になるケースがあります。
事業者は、産業医が辞任した場合や解任した場合、遅滞なく衛生委員会または安全衛生委員会に報告する義務があります。
ただし、この規定には行政への届出義務は含まれていません。そのため、解任のみを理由とする単独の行政届出は不要です。報告は、衛生委員会で口頭で行うか、議事録に記録する方法で対応します。
一方、産業医選任報告には、前任者の氏名や辞任・解任の年月日を記入する欄が設けられています。そのため、新たに産業医を選任する際には、前任者の退任状況も同時に報告する必要があります。
労働安全衛生規則の一部改正により、「産業医の解任を行ったことを労働基準監督署が把握することができる仕組みの検証を行うこと」を目的に、2026年8月から産業医の辞任又は解任があった場合は、所轄労働基準監督署へ辞任又は解任した産業医の氏名及び辞任又は解任の年月日等の報告を義務化する予定です。
(参考:e-Govパブリックコメント「労働安全衛生規則の一部を改正する省令案に関する御意見の募集について」)
ただし、産業医の後任者の選任により、辞任又は解任した産業医の氏名及び辞任又は解任の年月日等について所轄労働基準監督署長へ報告を行った場合は、この報告は不要です。現在の制度から変更はありません。
産業医の選任や、その後の届出を怠ると、法律に基づく罰則が科される可能性があるので注意しましょう。
労働安全衛生法 (第120条第1号)では、産業医の選任義務を怠った事業者に対して、50万円以下の罰金を科すことが定められています。
この罰則の対象となるのは、産業医を選ばなかった場合だけではありません。以下のケースでも、法令違反と見なされ罰則に処される可能性があります。そのため、期限内に正確な内容で提出することが重要です。
・選任はしたものの届出をしていない。
・実態として産業医が職場巡視や健康相談などの職務を適切に行っていない「名義貸し」のような状態である。
・産業医が退任したにもかかわらず、新たな産業医の選任を14日以内に行わない。

産業医を選任後は、遅滞なく定められた手順に従って、産業医選任報告の届出を行う必要があります。
以下では、様式と添付書類について解説しますので、ぜひ参考にしてください。
届出で使用する様式は、「総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告(様式第3号)」です。

入手方法は下記の2通りあります。
・「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」のウェブサイト上で届出する様式(帳票)を作成・印刷したり、画面から入力した情報をe-Govを介して直接電子申請する。
・厚生労働省「総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告」から産業医選任報告書のPDFをダウンロード する。
産業医選任報告を提出する際は、下記の2つの書類を添付する必要があります。
・医師免許証の写し
・産業医の資格要件に該当することを証明する書面(産業医認定証など)

この届出は、2025年1月1日から原則として電子申請が義務化されました。しかし、やむを得ない事情があるときは、紙媒体で提出することも可能です。
以下では、産業医選任報告の届出方法について解説していきます。
「e-Gov」とは、デジタル庁が運営する「電子政府の総合窓口」ポータルサイトです。
各府省が提供する行政情報を検索・案内できるほか、オンラインで申請・届出を行う窓口サービスを提供しています。
これまで紙で行っていた申請や届出の行政手続を電子申請することで、自宅や会社のパソコンから、24時間いつでも手続きを行うことが可能です。
期限管理が容易になり、控えPDFの保存や必要に応じた添付書類のアップロードも簡単に手続きできます。
原則として、「e-Gov」による電子申請が義務化されていますが、やむを得ない事由がある場合は、書面(紙)による届出が認められます。
・システム障害や通信障害により電子申請ができない
・事業場にインターネット環境が整備されていない
・電子証明書の取得が間に合わないなど、手続上やむを得ない事情がある
・その他、所轄労働基準監督署が相当と認める
e-Govは、産業医選任報告書の入手から作成、届出まですべてこのシステムで完了することができます。
以下で、事前準備について説明していきます。e-Gov電子申請サイト内の「利用準備」に詳しい説明があるので参考にしてください。
まず初めに、e-Gov 電子申請を利用する際には、「e-Gov アカウント」の取得が必要になります。「e-Gov アカウント」は、簡単な 3 ステップで取得することができ、5分~10分程度でアカウントの登録が完了します。
e-Gov電子申請サービスでは、申請内容の確認画面などを別ウィンドウで表示する場合があります。
そのため、ご利用のブラウザで「ポップアップブロック」が有効になっていると、画面が正しく表示されないことがあります。
電子申請を行う前に、ポップアップブロックを解除するか、e-Govのサイトを「許可」に設定してください。
最後に、e-Gov電子申請アプリケーション(Windows版・Mac OS版)をインストールします。 これで準備完了です。

e-Govでの申請手続きは、Webフォームに必要事項を入力する形式でおこないます。
e-Govにログインし、「産業医選任報告」の手続きを選びます。
画面の案内に沿って、事業場情報や産業医の氏名・資格など必要な情報を入力してください。
最後に内容を確認して申請ボタンを押せば完了です。申請状況はマイページからいつでも確認できます。
産業医選任報告(様式第3号)は、正確な情報に基づいて入力することが大切です。もし入力内容に誤りや不足があると、再提出を求められることもあります。
入力する内容自体は、「産業医選任報告(様式第3号)」の申請書と同じ内容です。ここでは項目ごとに注意する点について詳しく解説していきます。

労働保険への加入証明として事業者や企業に付与されている14桁の番号です。労働保険番号は、労働局や労働基準監督署のサイトで検索することができません。忘れた場合や不明な時は、事務組合などに問い合わせすることで確認できます。
産業医を複数選任する場合は、その人数分届出する必要があります。全体で何枚のうちの何ページ目なのか入力します。
事業場の情報は正式名称で入力してください。「〇〇株式会社✕✕営業所」のように、本社・営業所・支店・工場といった産業医を選任する場所で表記する点に注意しましょう。
「電話番号」の欄は、市外局番、市内局番及び番号をそれぞれ「-」で区切り入力してください。
事業の種類は、e-Statの(政府統計の総合窓口)のウェブサイトにある「日本標準産業分類(令和5年[2023年]7月改定) | 統計分類・用語の検索」を参照して入力します。
該当する大分類を選択すると、中分類が表示されるので、自社の事業に該当するものを選択してください。
常時雇用する従業員(正社員、契約社員、アルバイト、パートなど)数を記入します。役員・業務委託などは含みません。
「労働安全衛生規則 」第13条第1項第3号に該当する特定業務に従事する労働者数を記入します。
特定業務に従事する労働者
・高熱・暑熱業務や低温・寒冷業務
・X線などの有害放射線に晒される業務
・土石、獣毛等の埃塵または、粉末が飛散する場所における業務
・異常気圧下で行う業務
・削岩機や鋲打機等により体に著しい振動を与える業務
・重量物の取扱い等重激務
・騒音の伴う業務
・坑内での業務
・深夜業務
・有害ガスや有害な化学物質の発散する場所における業務
・病原体によって汚染の恐れが著しい業務 など
専属産業医ならば「専属」、それ以外は「非専属」になります。なお、常時1000人以上の労働者の場合や、有害業務の従事者が500人以上の場合は「専属」です。
より詳しく知りたいかたは、こちらの記事をご覧ください。

選任する産業医が産業医のみを仕事としている場合は「専任」、病院、診療所、健診機関など他の仕事をしている場合は「兼職」を選択する。
種別とは産業医の種別コード番号を記入します。コード番号は、様式の裏面に「別表」として記載されていますので、その下表を参考に該当の番号を記入しましょう。
最も産業医選任報告で利用されるケースが多いのは、「日本医師会産業医認定証」で、その場合は「1」を選択してください。
| コード | 種別 |
| 1 | 労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識についての研修であつて厚生労働大臣の指定する者(法人に限る。)が行うものを修了した者 |
| 2 | 産業医の養成等を行うことを目的とする医学の正規の課程を設置している産業医科大学その他の大学であつて厚生労働大臣が指定するものにおいて当該課程を修めて卒業した者であつて、その大学が行う実習を履修したもの |
| 3 | 労働衛生コンサルタントで試験区分が保健衛生である者 |
| 4 | 大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授又は講師の職にあり又はあつた者 |
| 5 | 労働安全衛生規則第14条第2項第5号に規定する者 |
| 6 | 平成8年10月1日以前に厚生労働大臣が定める研修の受講を開始し、これを修了した者 |
| 7 | 上のいずれにも該当しないが、平成10年9月30日において産業医としての経験年数が3年以上である者 |
「産業医選任報告書」の参考事項欄には、法律上の必須記載事項ではありませんが、補足説明が必要な場合に記載します。基本的には 特記事項がなければ空欄で問題ありません。
・新規選任(事業場の新設や従業員50人以上による)
・前任者の退任による交代
・契約満了による変更
・選任が法定期限(14日以内)を超えた場合は、理由を簡潔に記載することがあります。「産業医候補者との契約調整に時間を要したため」
・産業医が専門としている科や産業医が開業医であれば、「開業医」
2つの添付書類(医師免許証の写し及び産業医の資格証明書の写し)をPDFなどのデジタルファイルにしてアップロードします。
電子申請で書類をアップロードするときは、ファイル形式やサイズに制限があります。受理されなかったということがないように、事前に確認しておきましょう。
添付できるファイルサイズは各手続で個別に設定されており、1回の申請におけるファイルサイズの上限は合計100MBです。問題なく提出するためにも、PDFは低解像度で保存し、写真であれば圧縮して準備しておくことをおすすめします。ファイルをできれば20~30MB以下にすると安心です。
添付書類は、以下の拡張子のファイルで作成してください。
「.DOC」(ワープロソフトWordの文書ファイル)
「.JTD」(ワープロソフト一太郎の文書ファイルVer.8以降)
「.PDF」(PDF形式(文書管理/配布用)の文書ファイル)
「.XLS」(表計算ソフトExcelのファイル)
「.JPEG」(JPEG形式の画像ファイル)
e-Govにおける電子申請処理後の電子公文書は、通知後90日までe-Govからダウンロードすることができます。
手続の申請が完了した際に表示される「提出完了」画面にて取得可能です。取得した申請書データの控え(.xmlファイル)は、プレビュー表示されません。控えデータの内容を確認したい場合は、メモ帳をはじめとするテキストエディタでご確認ください。
また、プレビュー表示が可能な控えデータを取得したい場合は、同画面内「申請書控えダウンロード」ボタンより控えデータ一式を取得することができます。

やむを得ない事情のあるときは、書面でも提出も可能です。
産業医選任報告を出力し、注意事項を参考に正確に記入します。その後、所管の労働基準監督署の窓口に直接持参して提出して、窓口で受理印をもらうと提出完了です。提出用は2部用意し、1部は会社控えとして保管してください。
添付書類として、医師免許証の写しなど必要な書類を忘れずに添付しましょう。
窓口に足を運ぶ時間を省くことができるので便利です。窓口と同じ手順で書類を準備し、郵送の場合は、受領確認が取れる方法(簡易書留など)で発送手配することをお勧めします。
提出書類と一緒に「切手」と「宛名を記入した返信用封筒」を同封するのを忘れないようにしましょう。

派遣社員も人数に含めます。事業場規模の算定に当たっては、派遣先の事業場及び派遣元の事業場の双方について、派遣中の労働者の数を含めて、常時使用する労働者の数を算出するものとされています。
また、日雇労働者、パートタイマー等の臨時的労働者の数も含まれることに注意しましょう。
(参考:事業場の規模を判断するときの「常時使用する労働者の数」はどのように数えるのでしょうか)
提出した申請内容に不備があった場合、行政機関から補正通知が発行されます。
「申請案件一覧」画面では、申請案件ごとの補正通知の有無を確認することができます。
下記の手順で進めてください。

産業医の選任は、従業員の健康管理体制や労働環境を整えるうえで重要な法的義務です。
選任後は所定の様式で速やかに報告を行う必要があり、手続きを怠ると行政指導や罰則の対象となる可能性もあります。そのため、産業医の確保から届出までを確実に進めることが大切です。
以下の点に注意し、選任後は遅滞なく提出するようにしましょう。
・「事業所」は会社全体ではなく、支店・営業所・工場等の単位で判断する。
・労働者の増加や産業医の辞任等により変更が生じた場合も届出が必要です。
・常時50人以上の労働者には、正社員だけでなくパート・アルバイト・派遣社員等も含めて算入する。
・選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任する。
・選任後、遅滞なく所轄の労働基準監督署へ届出する。
・添付書類は2種類あり、電子申請時はファイル形式・重さに注意する。
しかし、産業医の選任方法や手続きに不安を感じる事業場も少なくありません。そのような場合は、求人ジャーナルの「産業医サポート」を活用することで、事業場の状況に応じた産業医の紹介から手続きのサポートまで、スムーズに進めることができます。
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※お問い合わせは東京支社「産業医サポート」まで