運輸業の
産業医選任
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企業（事業者）による従業員の健康管理の取組については、ストレスチェックの導入や働き方改革関連法などの法改正を受け、近年ますます社会からの注目を集める状況となっています。
その中で産業医サポートについてのお問い合わせを特に多くいただいているのが、運輸業の企業様（運輸事業者）です。

問い合わせ増加の背景としては、運輸業界における健康起因事故 (※) の発生件数が増加傾向という状況があります。

健康起因事故の発生原因を病名別でみると、「脳・心臓・血管疾患」を理由としたものがそのほとんどを占めました。
いずれの疾患も、事業者に毎年1回以上の実施義務が定められた従業員の健康診断の対応を適切に実施し、管理することが重要となる項目です。
健康診断結果の有所見率は全国平均50%を越えており、2人に1人の従業員は何かしらの所見を持ちながら就業する時代となりました。
従業員の高齢化も進む中で、事業者が従業員の健康管理に取組む重要性が高まっています。

※健康起因事故とは、当該運転者が脳疾患、心臓疾患及び意識喪失を発症し、負傷者（当該運転者を除く）が生じた重大事故などのことを言います。

運輸事業者においては従業員の運転中の交通事故など、事故発生のリスクと事故発生時の損害賠償リスクが高いことも特徴です。
健康起因事故が発生した場合、日頃から事業者が従業員の健康管理を十分に行っていたか、つまり事業者の安全配慮義務違反が発生していないかが事故原因調査時の焦点のひとつになります。
事故を起こした従業員に過重労働（長時間残業）や不十分な健康管理の状況があれば、事業者の使用者責任（賠償責任）が問われることになります。
運輸事業者が従業員の健康管理をおろそかにした状況で大事故発生となれば、高額な損害賠償金額の請求や、ニュースやSNSなどで社名を報じられることでのイメージ低下の発生により、会社経営の継続に大打撃を受けるリスクが高まります。

運輸事業者が従業員の健康管理について違反した場合には、法律で重い行政処分も設定されています。
令和3年（2021年）には法改正により行政処分が追加され、 (※)　健康診断実施後の再検査の未受診者が健康起因事故を発生させた場合にも、事業者に初違反40日車（再違反80日車）の行政処分が適用されることになりました。

※（貨物自動車運送事業法第17条第1項第1号第6号の新設部分）事業者が、当該運転者の事故発生日から過去１年以内に法定の健康診断を受診させずに乗務させていた場合、または、健康診断受診結果に基づき、脳疾患、心臓疾患及び意識喪失に関する疾病を疑い、要再検査や要精密検査、要治療の所見があるにもかかわらず、再検査を受診させずに乗務させていた場合のいずれかに該当した場合に適用する。

その他の業種に比べ、特に事業者による従業員の健康管理への対応が求められているのが運輸業界です。
日頃からの従業員の健康管理体制を整える必要があります。
運輸業界で話題となっている2024年問題についても、従業員の健康管理体制の整備は重要な施策のひとつになります。
健康問題に起因する欠勤や離職を予防することが人員確保につながり、従業員の残業時間の削減に寄与することができます。
従業員の生産性向上を目指し、産業医の意見を活用しながら腰痛予防の対策など、職場の課題解決の取組を進める運輸事業者も増加しています。