先生方へ 顧問医より 産業医の先生方へ

臨床医と産業医の業務の違い

 

産業医の業務は、健康診断の事後措置やメンタル相談など多岐にわたりますが、ふだんの心療内科医としての私の業務と重なるところも多くあります。

両者の異なる点としては、まず面談時間が違います。
クリニックは時間的制約があり、患者さん一人に10分以上の時間を費やせることは稀です。
一方、産業医は一人30分くらい時間を取れるので、じっくり話が聞けます。診察において薬の力よりも対話に重きを置きたい私にとって、望ましい環境といえます。

産業医は「健康な人」を相手にするという点も大きな違いです。
クリニックでは主に病気の人を診ますが、病気の人を理解するには、健康な人の状態を知らなければなりません。
企業で会う方々は、長時間労働などで疲れている人や、元気のない人もおりますが、多くの方は病気でありません。健康な人と話せる機会は、臨床医の仕事に大いに活きています。

 

産業医の仕事とは「話すこと」

 

産業医の仕事とは、端的に言うならば、おもに「話すこと」です。

「対話」と「講話」とに大きく分けられますが、対話とは社員の方々との面談。
講話とは、衛生委員会において意見を述べたり、社員向けの勉強会やセミナーで健康に役立つ話をすること。
そういった折々の話す機会に、相手に喜ばれ、納得してもらえるような話ができるか――そういう力が求められる仕事だとご理解いただければ、臨床医との違いも自ずと見えてくるのではないかと思います。

 

産業医に必要な心持ち

 

面談の時などは、できるだけ話しやすい雰囲気をつくるように心がけています。
笑みを絶やさず、雑談を盛り込み、プライバシーに触れたりもします。どのあたりにお住まいなのかよくお尋ねするのですが、そこから共通の話題が見つかると、一気に壁が崩れ、本音のやりとりができる空気になります。
また、私は企業を訪問する時、なるべく電車を利用するようにしています。
世の中が今どんなふうに動いているのか垣間見ることができますし、会社員の皆さんの気持ちも少しは理解できる気がします。暑い日に都会のアスファルトを歩いていると、営業職のキツさもリアルにわかります。

そういう「庶民感覚」のようなものが産業医には必要と思います。会社員の方とかけ離れた感覚で産業医をやるべきではないでしょうし、それでは役割を十分に果たせないのではないかと私は考えます。

 

企業とのあり方

 

企業が産業医を最初に迎える際は、労働安全衛生法の定めによりやむなく導入するといったケースがほとんどです。
企業には義務感があふれ、社員もしぶしぶ面談に来るという感じで、当初は歓迎されているとは言い難い雰囲気のことがあります。

ところが産業医としてやるべきことを誠実に、確実に行っていき、信頼感が醸成されていくと、関係性が徐々に変わってきます。
当初はいやいや来る人ばかりだったのが、自ら進んで健康相談に訪れる人が増えます。
社員が希望した健康相談で私のスケジュールがいっぱいになる日が出てきます。これはとてもうれしいことです。
しかし、最初からそうなる企業はありません。数年間の積み重ねがあって初めてそのような変化が起きるのです。

つまり産業医は、本来は長くやればやるほど社員からの要望が増えていく仕事です。企業は自然に、「この先生以外にうちの産業医はあり得ない」といった感覚になってきます。
そうなると、こちらとしてもさらにやる気が出て、やりがいが一層大きくなります。

それは、産業医冥利に尽きるといえますね。

 

産業医として

 

どなたも臆することなく、自信を持って、自分の技術・知識を相手に堂々と見せるつもりでチャレンジしていけばいいと思います。
さらに、あらゆる仕事に共通することですが、産業医も相手に感謝の気持ちを持ち続けられるかどうかが成功のカギのように感じます。

どの仕事も最初は、「入れてもらったからにはどんなことでもしよう」という初々しい気持ちがあるものですが、時が経つにつれ、やらされている感覚が出てきます。

そういう気持ちを抑え、常に感謝の気持ちを持ち続け、
「この会社の発展に貢献したい」
「この会社の社員を幸福にしたい」

といった強い思いで仕事を続けていけば、企業から評価されていくと確信しております。

 

 

さいごに

 

求人ジャーナルは業界大手、多くの企業と関わりがあります。
皆様もぜひ私たちと縁して頂き、産業医の道を実践してまいりましょう。